2016年1月~2016年12月の1年間に増担保規制が実施された銘柄の、実施されてから5営業日後の値位置です。
まずこの1年間に増担保規制が実施された件数を実施基準ごとに分けた一覧表で該当する標本数を確認しておきます。
下記クリックで好きな項目へ移動
増担保規制が実施された件数
実施基準 | 第一次措置 | 第二次措置 | 第三次措置 | 第四次措置 |
---|---|---|---|---|
(1)の「イ」 | 6 | 0 | 0 | 0 |
(1)の「ロ」 | 1 | 0 | 0 | 0 |
(1)の「ハ」 | 1 | 0 | 0 | 0 |
(2)の「イ」 | 1 | 0 | 0 | 0 |
(2)の「ロ」 | 124 | 19 | 0 | 0 |
(3)の「イ」 | 0 | 0 | 0 | 0 |
(3)の「ロ」 | 4 | 0 | 0 | 0 |
銘柄数 | 134 | 19 | 0 | 0 |
【(1)の「イ」】と【(3)の「ロ」】の両方の実施基準に該当している銘柄が2つ、【(1)の「ロ」】と【(2)の「ロ」】の両方の実施基準に該当している銘柄が1つあるので銘柄数と合計は一致しない。
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増担保規制実施5営業日後の値位置
増担保規制が実施されてから5営業日後にどのような値位置にあるのかを検証します。
データの期間(規制実施日ベース)
2016年1月1日~2016年12月31日
対象となる規制実施基準
第一次措置のうち、【(1)残高基準の「ハ」】と【(2)信用取引売買比率基準の「イ」】を除いたもの。
基本的に「上昇」が過熱しているケースのみを対象としています。
標本(サンプル)数
132回
5営業日後
5営業日後 | 回数 | 平均値 |
---|---|---|
プラス | 25 | +12.70% |
マイナス | 107 | △15.40% |
同値 | 0 | 0% |
全体 | 132 | △10.08% |
なんか相当すごい数字が出てきました。「10%」って・・・。しかもマイナスの数がプラスの4倍もあるなんて。もしかしてこれって大発見!? もう少し詳しく調べてみましょう。
各種数値
最大上昇率(陽線)・・・+45.77%:「サノヤスホールディングス(7022)」〔2016/07/19〕
最大下落率(陰線)・・・△47.01%:「AppBank(6177)」〔2016/07/25〕
平均値・・・△10.08%
中央値・・・△10.65%
最頻分布帯・・・△20.00%~△18.00%(12回)
日付は増担保規制実施日
最大上昇率がもっと小さいと良かったんですが最大数値は上昇と下落とでほぼ一緒ですね。中央値は平均値とほぼ同等でマイナス寄り。最頻分布帯が大きなマイナスにあるということはかなりいい線いってるような気がします。ヒストグラムも確認しておきましょう。
ヒストグラム
今まで見てきたものと基本同じような感じですね。マイナスのところにしっかりと山ができていると安心できます。何か注意しておくことは無かったかな。
良い心掛けじゃな、賢者よ。
あっ、長老来てたんですね。いい数字ばっかりなのでちょっと気になったものですから。
その感性は大事じゃよ。人間というものは自分にとって都合の良いものしか見えなくなってしまう生き物じゃからな。注意しておかんと足元を掬われる、というよりも相場の場合破滅への道を歩みかねん。
そうなんですね。私は実戦には疎いのでそのあたりのことはよく分かりません。ところでこのヒストグラムを見て何かお気づきの点がありますか?
そうじゃな。まず全体に横幅が広くなって裾野がロングテールになっておる。特に中心からプラス方向への伸びの方が大きいのう。しかもプラス圏の裾野でやや大きめの数値を取っておるところもあるようじゃ。
そうですね。これがどういった意味を持つのですか?
これが統計データ、つまり「平均」を利用して相場を張る時に大きな過ちを犯してしまう原因の元なんじゃよ。
どういうことですか?
マイナスの回数が圧倒的にプラスよりも多く、平均値もいい数字になっておる。期待値はかなり良いと言えるじゃろう。実際にはその他コストの存在があるので「売り」仕掛けでそのまま使用することはできんがな。それはとりあえず置いといて、このデータを使った「売りシステム」があるとして高確率、約8割か、で勝って利益がどんどん増えていくとどうなると思う?
嬉しいですね!
そうではなくて、やり方に何か変化は出てこんかな?
すみません、実戦はしないのでよく分かりません・・・。
そうじゃった。スマン、スマン。初めから満額張るのは論外じゃが、当初はしっかりとドローダウンを計算してポジションサイジングをしておる者でも、勝ちが続くようになると次第に大胆になってくるんじゃよ。いつの間にか一回のトレードで大金を当てようとしてしまうんじゃな。なぜって? 「だって勝つのは分かってるんだもん、当然でしょ!」
そうなんですか。「100%」じゃないのは分かってるはずなのに・・・。
すべての人間がそうなるとは言わんがな。じゃがそうなりやすい、というよりもむしろそうなってしまう者が少ないながらも「確実に」存在するといった方が正確かもしれんな
そうなるとどうなるんですか?
ある日突然「ドッカーン!」じゃよ。強制退場させられる。
でも勝率が高いんですから勝つこともありますよね? というよりも勝つことの方が多いんじゃないですか? だとしたら強制退場の前に大金を手にすることの方が確率的には高いような気がしますが。
そうじゃよ。確かに大金を手にするじゃろうな。しかし大金を手にしたとしてもそこでは終わらんのじゃよ。それを元手にしてさらにつぎ込む。
どうして止めないんですか? 既に十分なお金を手にしているんですよね。
だって「勝つのは分かっとる」んじゃよ。やればやるほど儲かるんじゃからやらない手はなかろう。それにこういう思考に走る輩は、お金は「手段」ではなく「目的」そのものなんじゃ。お金のために相場を張るのだから終わりがないんじゃよ。
「終わりがない」?
そう。勝ち続ける限り終わりはない。
ではいつ終わるんですか?
自分では止めることができん。死ぬまで止めん。じゃから「相場」が終わらせてくれるんじゃよ。つまり強制退場じゃな。
え~っ!! それでは、本人が死ぬか強制退場の二者択一になってしまいますよ!?
ホントじゃよ。信じるか信じないかはそなた次第じゃ。
私はあまり実戦はしないのでよく分からないのですが、いろいろ難しいんですね。
相場はほんに奥深い。
これ以降に記載されている内容
- 市場平均に左右される!?
- システムの一部<
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市場平均に左右される!?
他に何か気をつけるべき点はありますか?
そうじゃな、株式市場全体の地合のことも考慮せねばなるまい。
と言いますと?
個別銘柄は普段から多かれ少なかれ市場全体の値動きの影響を受けておるものじゃが、増担保規制が掛かった銘柄はその傾向が強くなることが考えられる。なぜならば、増担保で新規建玉を抑制するということは、その銘柄独自の材料への反応を弱くしてしまうからのう。その反対効果として市場全体の影響を受けやすくなるということじゃよ。ちょっとこの期間の市場平均を調べてもらえんかのう。
ちょっとお待ちください。どうぞ。
2015/12/30 | 2016/12/30 | |
日経平均 | 19,033.71 | 19,114.37 |
TOPIX | 1,547.30 | 1,518.61 |
JASDAQ平均 | 2,647.60 | 2,739.25 |
マザーズ指数 | 887.14 | 942.68 |
ほう、日経平均は上げてTOPIXは下げておるが、双方とも大して変わっとらんな。JASDAQとマザーズはあくまでも参考じゃが上昇しておるのか。つまり2016年という1年を通してみると市場全体の影響はあまり受けておらんということじゃな。これはデータの客観性を担保するのに好都合な時期を結果として選定したようじゃのう。まあ新興市場の上昇基調というオマケはあるものの、それは逆に優位性を証明する有利な材料になるわけじゃし。
ということはこのデータの優位性はお墨付きになりますか?
優位性は確かに存在しておると思うよ。実際その一部は、実施日当日の寄付きで構成されておるわけじゃからのう。ただし、この「10%」という数字が将来に渡って続くかどうかは保証の限りではない。
どういうことですか?
増担保規制銘柄が大量生産されておるこの2017年、体感としてあまり下がっておらんような気がする。高値更新銘柄が相次いだのも記憶に新しい。実際市場平均はかなり上昇しておるみたいじゃし・・・。
いずれ最新データ版も作成して調べてみます。
そうじゃな。市場全体が上昇相場にあってはさすがにあまり機能せんかもしれんのう。そしてその期間がある程度長く続いてしまうおそれがある、と。じゃが逆に全体が下げるような時はより大きな効果が見込める可能性もあるし、全体で見れば「優位性あり」と言っても差し支えなかろう。
扱い方に注意が必要ということですね。
そうじゃな。人間誰しも、「いつでも、どこでも、どんな場合でも機能するシステム」を欲しがるが、そんなもの相場には存在せんよ。
どうしてですか?
相手が自分と同じ人間じゃからな。ある意味イタチごっこみたいなもんじゃよ。
じゃあ、相場を分析することに意味は無いんでしょうか?
そこに意味を見出すか否かはそなた次第じゃ。もともと物事に意味など無いからのう。人間が勝手に自分の好きなように意味づけしておるだけじゃよ。だから人によって意味が違うことがいくらでもある。
私にはよく分かりません。ですが、私は相場を張るのはあまり好きではありませんが分析するのは好きです。
そなたがそう思うておるのならそれでええんじゃないかのう。
システムの一部
それともう一点注意点がある。
何でしょう?
他の統計データもそうじゃが、これらはあくまでもシステムを構成する一部である「機能する概念」でしかない。これをシステムに昇華させるには他にも決めることがいろいろとあるでのう。
「機能する概念」?
説明すると長くなるので詳しくはいずれまた。気になるならこの本を読んでおきなさい。